痛いところが本当に悪いとは限らない、というお話(前編)

痛いところが果たして本当に悪いところかどうか、その見極めはとても大事です。
今回は、私が体験したお話です。

急にしびれるような歯茎の痛みが

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夜間に左の下の歯(顎の左側)あたりが時折痛むようになりました。歯茎が腫れたような、浮いたような感じは以前にも時々ありましたが、気づかない内に治っていましたのであまり気にしていなかったのです。

ところが今回は夜間に急に「ビーン」という強いしびれが出て、同時に歯茎もしくは歯が痛い感じがするのです。はじめは三叉神経痛かとも思いましたが、それにしては痛みの時間が長いので違うようです(三叉神経痛は数秒から数十秒程度です)。ですから「ああ。いつもの浮いた感じのキツイバージョンだな?」というくらいにしか思いませんでした。
5分ほど経過しても痛みがなかなかおさまらないので、いよいよおかしいなあ、と思い、色々と痛みのあるあたりを触ってみると、どうも痛みのある左顎のほうが右に比べ腫れぼったい感じがします。よく調べてみると、左の顎にある咬筋という筋肉に圧痛(押さえると痛む部分)がありました。咬筋に硬結(筋肉が部分的に硬くなった場所、いわゆるコリ)があったので、そこを圧迫してみると、痛みとしびれがキツくなります。原因はこれかも?と思い、しばらく圧迫しているとやがて痛みは消え、朝まで眠ることができました。

一旦治まったのに再発

咬筋の硬結への圧迫と咬筋周囲へのマッサージを続けることで夜間痛は消えていたのですが、1週間もしないうちに再発するようになってきました。
痛みの感覚としては以前と同じです。いや、その時よりもわずかながら強くなっているように思いました。どうやらこれは咬筋のトリガーポイント(他の場所に痛みを発生させる引き金点となる筋肉のコリ)が関係している痛みのようです。トリガーポイントに由来する痛みは治療により一旦治まっても、後にまた症状が出てくることは臨床上よくあります。ちなみに咬筋のトリガーポイントは同側の顎に痛み(関連痛)を発生させます。

原因は咬筋ではなく他の筋?

咬筋の硬結をほぐしてもなおスッキリしないので、「他の筋肉に問題があって咬筋に痛みが出ているのではないか?」と思い、咬筋の辺りに痛みを広げる筋肉は。。。と調べたところ、肩こりの筋肉で有名な僧帽筋にトリガーポイントを発見しました。僧帽筋は肩こりの時に押さえてもらうと気持ちいい、首筋から肩にかけての部分にある筋肉です。

つまりこういう機序のようです。

僧帽筋のコリがひどくなってきた→僧帽筋が原因でその関連のある咬筋にコリを発生させた→咬筋のコリがひどくなることで、さらにその関連痛である下顎の横に痛みを発生させた。
そう考えると辻褄があいます。
また咬筋を治療しても思ったほど効果的でなかった理由もわかります。
では僧帽筋のコリがなぜそんなに強くなったのか、ということですが、よくよく考えてみると思い当たることがありました。

半月ほど前に通勤カバンを変えたのでした。

後編に続きます

 

※2016.2.6追記
コラムLatteに「咬筋のトリガーポイント」の見つけ方や自分でできる対処方法についてのコラムを書きました。以下のリンクへどうぞ。

頬のコリが歯痛や歯茎痛の原因!?トリガーポイントによる痛み解消法