発達障害児のつま先立ちを評価するポイントと注意点

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発達障害児のつま先立ちについてご質問をいただきました

前回のエッセイで、「扁平足の改善には、つま先立ちがオススメ」を書いたところ、読者の方から「発達障害(自閉症)の子供さんはつま先立ちをすることが多いですが、どのような支援や指導をすれば良いでしょうか」とご質問をいただきました。

確かに発達障害児の中には、つま先立ちをする子供さんは一定数います。

まだ歩行が獲得できていない子供の理学療法を行っている場面でも、つかまり立ちや伝い歩きをし始めた子供が、踵や足の裏を床に着けずに、つま先だちのままというような状況がよく見られます。

 

理由や支援、指導方法は色々考えられるのですが、まずは2つほど試して(確認して)いただきたいことをお答えしました。

以下に抜粋します。

子どもと姿勢研究所の西村です。

記事をご覧いただき、またお問い合わせをいただき、ありがとうございます。

 

さて、早速ですが、ご質問についてわかる範囲でお答えさせていただきます。

 

 

自閉症児には、つま先立ちになる子供が一定数いると思いますが、2つのタイプ(理由)に分類できると思います。

ちなみに、足の関節の柔らかさには問題がないと仮定します。

 

まず一つ目のタイプですが、足の裏や踵に感覚過敏がある子どもです。

 

足の裏を触られると嫌がって足を引っ込めたりする、体を支えながら足の裏や踵を床に着けるように誘導しても、すぐに足を浮かそうとする、などは、足の裏や踵の感覚(触覚)が過敏になっていることが考えられます。

 

この場合は、感覚の過敏性をなくしていくことが大事になりますので、拒否されない程度に、普段から足の裏を触り、刺激を入れていく、踵をドン!と踏みしめて歩く歩き方を遊びの中に取り入れるなどがよいかと思います。

 

 

 

次に二つ目のタイプです。

 

これは、立ったときに足首の周りの筋肉(足の指や足の裏の筋肉なども含む)をバランス良く働かせ、立位バランスを上手くとることが難しいため、ふくらはぎの筋肉や脛の前の筋肉などを使って、足首がグラつかないように、足首や膝の関節をロックしていることが考えられます。

 

こういった場合は、足首の固定性を高める取り組みが有効です。

 

具体的には二通りの方法があります。

 

 

1.足首の周りの筋肉を鍛えることで、足首周りの固定性を高める方法。

 

足指ジャンケンなどで足裏の筋肉をしっかり使わせる。また、ゴムチューブを足に掛け、足首の力でチューブを引っ張る(内側や外側、反らす方向などいろいろな向きに)などの方法があります。もし、足首の力が弱いようなら、しっかりとゴムチューブを足首の力で引っ張ることができないはずです。

 

 

2.足首の固定性が良くなる靴を履くようにする。

 

いわゆるハイシューズと呼ばれる、足首まで覆ったタイプの靴は、足首の固定に有効です。ただし、ベルトや紐をしっかりと結び、足と靴を密着させるようにしてください。

他にも考えられるつま先立ちをする理由

今回、問題点を絞るために2つの要因についてご回答していますが、つま先立ちをする理由は他にも考えられます。

例えば、「つま先立ちの感覚を楽しんでいる」といった場合です。

また床の上なら足の裏を着くけれど、土の上や砂の上は裸足で歩くことを嫌がりつま先立ちになる、などの場合もあるでしょう。

 

状況や環境によっても変わってくることもあるので、「どんな場面でどうしているのか」といったことを確認しておくことも大切になります。

どうしても気になるなら、専門家へ相談するのも一つの手です

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色々状況を見てみても、理由や対処方法が分からないこともあるでしょう。

不安な場合は、専門機関に相談するのも一つの手です。

医師の診察のもと、理学療法士や作業療法士などのセラピストに評価をしてもらい、日常のアドバイスをもらえば、安心感にもつながるでしょう。

セラピストは、日常の中でできる取り組みを分かりやすく伝えてくれますので、あまり気負うことなく相談してみてはいかがでしょう。

「つま先立ちをするから自閉症」ではありません

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ところで、このつま先立ちと自閉症の関連付け、捉え方には注意が必要です。

つまり、

自閉症児の中には、つま先立ちをする子供がいる

という事実はありますが、

つま先立ちをしているからといって、自閉症であるとは言えない

ということです。

つま先立ちをよくするから自閉症なのでは?と心配する親御さんもおられると思いますが、それを考える前に子供の全体像を見たり、時間をかけて見守るようにしてあげましょう

その経過如何によって、専門機関にかかるかどうかを決めればよいのです。

 

歩く距離が増えるにつれ、つま先立ちは自然になくなってくることもあります。

感覚の過敏性がなくなってくるに連れて、自然に足の裏を着くようにもなることも良くあります。

またつま先立ちやつま先歩きが大きな問題(例えばスグ転んで怪我をするとか、足首の関節が硬くなってきたとかなど)につながらなければ、別につま先歩きでも問題にはならないこともあります。

 

無理に止めさせる必要もありません。

つま先歩きをするから、それをしないように強制させることよりも、色々な原因を考え、色々試してみて、その変化や経過を見守ることの方が重要なのです。

 

具体的には、まずは足の裏の感覚過敏があるかどうかをチェックすることから始めましょう。

感覚過敏がないようなら、「いつもつま先立ちなのかどうか」、「大人が踵をつけるように誘導した場合、子供はどんな反応を示すのか」などを見ます。

様子を見てもよく分からなかったり、他にどこを見ればよいのか分からなくなったら、一旦そのまま経過を見るというのもよいでしょう。

 

また、上にも書いたように、専門機関に相談してみてもよいでしょう。

 

いずれにしても、保護者をはじめとする大人が、冷静に、ゆったりと子供に関わるという視点を忘れないようにしましょう。

この部分を忘れると、「つま先立ちをどうなくすか」ということにばかり目が行き、「木を見て森を見ず」になってしまいますので、注意が必要です。