ことばの遅れが気になる子、運動発達にも目を向けてみよう|保育士さん向け

少し前のお話になりますが、守口市役所さま主催の保育士向け研修で、言語聴覚士の西村千織が「言葉の発達」についてお話しする機会をいただきました。

私は「子どもと姿勢研究所」のほかに、発達特性のある子どもの理解や関わり方について発信する「こども発達LABO.」も運営しています。西村千織は、そこで一緒に活動している言語聴覚士です。

以前、私が守口市で運動発達について講演したご縁から、今回は「言語の視点からも」とご依頼をいただきました。

そこで今回は、この研修を簡単にご紹介しながら、ことばの発達と運動発達のつながりについて、理学療法士の視点から考えてみたいと思います。

保育士の先生方に「ことばの発達」について

今回の研修では、「言葉の発達の育ちについて」をテーマに、ことばやコミュニケーションの発達についてお話ししました。

研修の中で西村千織が大切にしていたのは、「ことばをどう教えるか」だけではなく、日々の保育そのものの中に、ことばの育ちにつながる経験がたくさんあるという視点です。

友達との遊び、先生とのやりとり、生活の中でのコミュニケーション。子どもはそうした毎日の経験を積み重ねながら、人と関わり、自分の思いを伝えていきます。


「ことばが遅い」「やりとりが続きにくい」といった姿が気になると、どうしてもことばそのものに目が向きます。しかし、その子が普段どのように遊び、人と関わり、周囲に働きかけているのかを見ることも大切です。

今回の研修では、こうした子どもの見方や日々の保育の大切さについて、言語聴覚士の立場からお伝えしました。

ことばと運動発達は別々のものではありません

ここからは、理学療法士である私の専門領域から考えてみたいと思います。

「ことばが遅い」と聞くと、ことばそのものに目が向きがちです。

しかし、子どもの発達は、「ことば」「運動」「認知」「コミュニケーション」と、それぞれが完全に独立して進んでいくものではありません。


子どもは身体を動かすことで、自分の周りにある世界を知っていきます。

手を伸ばして物に触れる、自分で移動して興味のあるところへ行く、おもちゃを操作する、大人や友達と身体を使って遊ぶ。こうした経験を重ねながら、興味の対象が広がり、人や物への働きかけも増えていきます。


そして、そのような経験の中で、人とのやりとりやコミュニケーションも育っていきます。

その意味で、ことばの発達と身体・運動発達を切り離して考えすぎないことは大切だと思います。

ことばが気になったら、運動発達にも目を向けてみる

ですから、保育の中で「この子、少しことばが遅いかな」と感じる子がいたら、ことばだけではなく、その子の運動発達や遊び方にも目を向けてみてください。

  • 身体を使った遊びをどのように楽しんでいるか
  • 自分から興味のあるものに近づいたり、手を伸ばしたりしているか
  • おもちゃをどのように操作しているか
  • 大人や友達と一緒に遊ぶことを楽しんでいるか
  • 遊びがどのように広がっているか

こうした姿を見ていくと、その子が今どのような経験を積んでいるのかが少しずつ見えてきます。

そして、その中にことばやコミュニケーションの育ちにつながるヒントが隠れていることがあります。


もちろん、「運動発達が遅れているから、ことばが遅れる」という単純な話ではありません。

ことばの発達にはさまざまな要因が関係しています。


大切なのは、「ことばの心配だから、ことばだけを見る」と考えないことです。

子どもの発達を「領域」で分けすぎない

たとえば姿勢が崩れている子がいたとき、「姿勢が悪いから直しましょう」と考えるのではなく、「なぜ、この子はこの姿勢になっているのだろう?」と考える。

ことばについても同じです。

「ことばが遅い」という目に見える部分だけを取り出すのではなく、その子はどんな遊びをしているのか、身体をどのように使っているのか、人や物にどのように関わっているのか。その子全体を見ていくことで、見えてくることがあります。


姿勢も、運動も、遊びも、ことばも、コミュニケーションも、一人の子どもの発達の中で起こっていることです。

だからこそ、気になる姿があるときほど、一つの領域だけで考えずに、「この子は今、どのように育っているのだろう?」という視点で子どもを見ることが、その子に合った手立てを考える第一歩になると思います。

保育の中に「手立て」のヒントがあります

発達が気になる子がいると、「何か特別なことをしなければ」と考えることがあります。

しかし、専門的な支援を別に付け加えることが有効、ということではありません。


日々の遊びや生活の中で子どもの姿を見ながら、「この子は何を楽しんでいるのだろう」「身体の発達はどうだろう」「どんなときに人と関わろうとするのだろう」と考えてみると、いつもの保育の中でできることが見えてくる、と思います。


ことばが気になる子についても、ことばだけではなく、運動、遊び、人との関係などへ少し視野を広げてみてください。

その中に、その子を理解し、次の関わり方を考えるヒントが見つかるかもしれません。

保育士・幼稚園教諭の皆さまを対象とした研修について

今回ご紹介した守口市さんでの研修のように、私たちは保育士・幼稚園教諭の先生方を対象に、子どもの発達についてお話しする機会をいただいています。

こども発達LABO.では、保育園・幼稚園・認定こども園、保育関係団体、自治体などを対象に、発達特性のある子どもの理解や具体的な関わり方についての研修・講演を行っています。

姿勢・運動発達・感覚・集団参加などについては私、西村猛が、ことば・コミュニケーション・認知・対人関係・学習などについては言語聴覚士の西村千織が担当し、テーマによっては2名で担当することも可能です。


「ことばが遅い」「集団活動に入りにくい」「指示が伝わりにくい」「落ち着いて参加することが難しい」など、保育現場で見られる子どもの気になる姿について、単に対応方法を考えるのではなく、「なぜ、この子はこうしているのだろう?」というところから考える研修を大切にしています。

保育現場での「気になる子」への理解や具体的な手立てについて研修をご検討の際は、こども発達LABO.の保育士向け研修・講演のご案内をご覧ください。