予防のお話は一般論になってしまうのが問題

予防の話が忘れられやすい理由

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昨今の健康ブームも後押ししてか、高齢者を対象とした「転倒予防教室」や「寝たきりにならない体作り」などの講座や教室を街中でもよく見かけます。
私も仕事で高齢者の転倒予防教室などの講師をよくしましたが、ひとつ特徴的なことを感じていました。
それは簡単にいうと、「人は半年くらい前に聞いた話は、案外忘れてしまっている」ということです。これはひとえに「高齢者の記憶の問題」というわけではなさそうです。

実はこういうお話が忘れられやすいのいは、「予防」の話だからでもあるのです。
つまり、「予防のお話」を聞く人は「特に今困っていない人たち」ということです。
すでに転倒した人で今何か困っていることがあれば、我々専門家はもっと個別性のある具体的な話をしますね。
また本人さんも「どうにか困っているところを少しでも解決したい」と希望されますので、ご説明したことがしっかりと記憶されるということです。
しかし「予防」ということは、一般論でお話をすることになってしまいます。そうすると、「自分はちょっと違うなあ」とか、「転倒した後の不自由さを聞いてもイマイチピンとこないなあ」となってしまうので、どうしても意識に残りにくくなってしまうのです。

子どもの姿勢もつい一般論で話されてしまうという問題

子どもの姿勢についても、子ども一人一人で生活環境が違い、日常の中での体の使い方、体力も違うので、本来は個別性があってしかるべきなんですが、教育の場においてもどうしても一律に指導する、ということになってしまいます。そうなると、先ほどの高齢者のように実感が湧かないか、気をつけるべき点を間違えてしまう、ということになってしまいます。
単純に言うと、一人ひとりの子どもに応じたアドバイスになっていないということになります。
もちろん姿勢を良くするためにはどの子どもであっても気をつけないといけないことなどの共通事項もあるでしょう。しかし、そこで終わってしまえば、個々に合った方法論が示されることがないままになってしまいますね。

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原因が「やる気のなさ」と断定されてしまうことも

また子どもの姿勢では、「今、大きな問題が起こっていないが、このままいくと将来問題が発生する危険がある」ということもよくあります。しかしこれも将来の話なので、どうしても「危険がすぐそばに迫っている!」という危機感にはつながりにくいのです。

「みんな一律に同じ」というのは、体や健康、医学的側面から見ると問題が多いものです。一律に指導してその枠からはみ出てしまう子(うまく課題がこなせない子)は、「気持ちが足りない」とか「やる気が出ていないからだ」というような気持ちの問題(精神論)にされてしまうこともあるでしょう。

子どもの個性に合わせた育て方をしよう!とはよく言われますが、これは姿勢発達でも同じことがいえます。
その子、その子の姿勢の問題点を評価し、改善するための適切な日常生活についての個別性のある方法が提案されるのがもっとも有効なことではないかなと思います。