スポーツの世界に見られる根性論を、子供の体作りに当てはめてはいけない

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私は根性論が嫌いです。

「やればできる!」とか「願えば叶う」という無責任な言葉は、子どもの可能性を潰すと思っています。

なぜなら、やってもできない子どもは「ダメな子」というレッテルを貼られることになるからです。

願っても叶わなければ、「思いが弱いからだ」と言われてしまうからです。

 

今回はそのことについて書いてみます。

 

元陸上競技選手でスポーツコメンテーターの為末大さんは、いわゆるスポーツにおける根性論や、やればできる論について懐疑的な視点を持っておられます。

 

こちらの記事から引用しながら、私見を加え、子どもの体作りについて考察してみたいと思います。

※以下囲み文は、上記サイト記事からの引用です。

コツを教えるコツが分からない人が、根性論に走るのかも?

量が大事だという思い込みが強い文化では、量には耐性がないが、質では成長できる選手を潰すことになる。

子どもの体作りについて、質より量を重視する方も多くいることと思います。

しかし、運動のコツ(体作りで言えば、動きのコツや使い方のコツ)を上手く教えてあげることで、スッと理解できる子どももいるのです。

 

私が最近感じるのは、いわゆる根性論に走る大人は、「コツを教えるコツが分からない」「そもそも大人自身が理論や方法論をよく分かっていない」ということがベースにあるのではないかということです。

一部の成功体験を見聞きして、「ほら。やればできるんだ」と。

精神論が好きとかいう問題ではなく、精神論でしか語る材料がない、ということではないかと思います。

 

例えば、鉄棒の逆上がりを教えるのがうまい先生は、「できていない理由は、腹筋を働かせるタイミングがずれているからだ」と課題を指摘し、「足を持ち上げた瞬間に腹筋に力を入れると上手くいくよ」などと、分かりやすく子供に説明できるからこそ、「教えるのが上手い」と言われます。

「とにかく数をこなせばいいから、どんどん練習をやりなさい」とか「グッと力を入れて、ガーッと体を持っていけばできる!」とかいう先生がいたとしたら、それは教えるのが上手くない先生です。

グーとかガーとかって、言っている本人の感覚に過ぎませんからね。

 

抽象的な言葉で説明して許されるのは、長嶋茂雄さんくらいです(笑)。

 

根性論で酷使された筋肉や関節は、大人になってから、痛みや不調の原因になる

本当の意味では根性論は結果だけではなく、勝利への至り方にもこだわりが強い。変な話ではあるが、犠牲を払わずに勝ってしまうことを嫌がる傾向にある。

むしろ根性論を重視する大人は、結果へのこだわりよりも、勝利への至り方にはこだわる要素が強いのではないかと思います。

「血の滲むような努力をした。負けても仕方ないじゃないか。その過程こそが大事なんだ。この努力はきっとプラスになる」と。

 

しかし、血の滲むような努力によって酷使された関節や筋肉は、大人になった時、痛みとして出現します

これはプラスではなく、マイナスです。

 

また精神面への悪影響もあります。

負けた(上手く行かなかった)理由を考えることなく、結果より努力が大事だと思い込んだ子どもは、大人になった時、仕事や人生の失敗から学ぶことなく、次の手を考えることもなくなるのではないでしょうか。

失敗から何かを学ぶことがなく、そしてそれを次に活かすことがなければ、それはマイナスです。

 

「負けたという辛い気持ちを慰める言葉として、『結果よりも過程だよ』と声を掛けるのはいいことなのでは?」と思う方もおられるでしょう。

慰めること自体は否定しませんが、「なぜ失敗したのか。どうすれば成功するのか」ということを子どもの目線に立って、次の作戦を一緒に考えることこそ、大人がするべきことではないでしょうか。

 

努力すれば報われるという安直な考えは、障害を否定することにもつながる

さて、私が根性論を嫌う理由がもう一つあります。

それは、障害がある子どもたちに対する影響です。

努力すれば報われる、頑張れば頑張っただけ好転する、という考え方は、治ることのない障害を持ちながら生活している子ども達にとって、脅威になります。

「本人の自覚があれば良くなる。良くなろうという気持ちがないから、良くならない」、と言われてしまうことにつながりかねないからです。

 

その証拠に、いまだに「障害を克服」などという言葉が氾濫しています。

そもそも障害は克服するものではありません

これは障害を根性でどうにかしようという典型です。

 

大人ができることは、根性論より理論を子供に教えること

むしろ考える作業の方が大事でそれを実行するのは二の次になる程だ。

大人ができることは、「根性論で子どもの体作りを考えないこと」です。

そして、大人自身が子どもの体作りに関する知識や理論を知し、それを分かりやすく子どもに伝えていくことが大切です。

以下に子どもの体作りにおいて、大人が気をつけておくべきことを挙げてみます。

  • 子どもの体作りに関する理論をしっかり知ること。
  • それを実行し、うまくいかない場合は、その理由を子どもと一緒に、子どもの目線で考えること。
  • 環境設定を行い、子どもが伸び伸びと学べる準備をすること。
  • 上手く行けば成功を一緒に喜ぶこと。
  • 「根性だ!やる気だ!」という言葉に逃げないこと。
大人が正しい知識を持ち、精神論ではなく、理論的な運動指導を行っていきましょう。