増えている「極端に不器用な子ども」
まずは「極端に不器用」という言葉の定義を整理します。
例えば、以下のような特徴があります:
- 極端に字が乱雑
- 何もないところで転倒
- 手にしたものをすぐに落とす
- 飛んでくるボールをキャッチできない
- 靴紐が結べない
- 箸を適切に使えない
これらは単なる不器用さとは異なり、「日常生活に支障をきたすほどの不器用さ」を指します。
このような子どもが近年増加していると言われています。
日本ではあまり一般的ではありませんが、これらの極端な不器用さは「発達性協調運動障害」と呼ばれます。
脳や筋肉、関節に明確な問題がないにもかかわらず、手足(体)を適切に操作できない状態を指します。
これは、手先の不器用さだけでなく、全身の運動における不器用さも含まれます。
研究によると、発達性協調運動障害の子どもの割合は6%~10%程度とされています。
10人に1人という数字は、決して少なくない割合ですね。
「やる気が無い子」とレッテルを貼られることで、自己肯定感は下がる一方となる
こういった子どもたちは、学校やスポーツ教室などで「やる気がない」「努力が不足している」とレッテルを貼られがちです。
不器用という概念は障害として認識されにくく、「努力で克服できる」と考えられやすことが理由の一つです。
確かに、軽度の不器用さは練習によって改善可能です。しかし、発達性協調運動障害の場合、外見上明らかな病気ではなく、また特定の身体的問題も伴わないため、「体を上手く使えない」という状態が理解されにくいのです。
これは単なる練習不足ではなく、脳の特性に由来するものです。
つまり、「不器用」という特性を生まれながらに持っているため、努力や意識で改善できるといったようなものではないのです。
もし本人が一生懸命努力しても、できないことを「やる気がない」「やろうと思えばできる」と叱責され続ければ、どうなるでしょうか。徐々に自信を失い、「自分はダメだ」と自己否定的になってしまいます。結果として、自己肯定感は育まれず、むしろ低下の一途をたどります。
それぞれのタイプに合った関わり方が必要です
不器用には2つのタイプがあり、アプローチ方法は異なります
- 運動機会の不足により体がうまく使えない場合
- 発達性協調運動障害により脳のコントロールに問題がある場合
運動不足の子どもには、経験の機会を増やし、失敗を繰り返すことで成功につなげる方法が効果的です。
一方、発達性協調運動障害の子どもの場合、失敗経験は自己肯定感をさらに低下させるため、異なるアプローチが必要です。
まずは、単なる練習不足なのか、発達性協調運動障害によるものなのかを見極める必要があります。
一般的なスポーツや筋トレは、発達性協調運動障害の子どもには効果が限定的です。
そのため「できないことを克服させる」のではなく、「得意なことや自信を持てることを行わせ、自己肯定感を育むこと」が何より重要になります。
また作業療法士や理学療法士などのリハビリテーション専門家に相談し、子どもの特性に合ったプログラムを組むなども良い方法です。
お子さんによっては成長とともに、その不器用さが目立たなくなっていくこともありますので、まずは自己肯定感を下げないような関わり方をしつつ、得意なことを伸ばしてあげるような取り組みをしながら様子を見るのも良い方法だと言えるでしょう。