
昔ながらの遊び「だるまさんがころんだ」。この遊びには、実は体の発達にとって非常に大きなメリットがあります。
その効果とはズバリ、
- 体幹筋が強くなる
- バランス能力が向上する
- 筋肉をタイミングよく働かせる能力が上達する
- 聴覚・視覚・固有覚の統合を促す
これらについて一つずつ解説していきます。
体幹筋が強くなる
鬼が背中を向けて「だるまさんがころんだ」と唱え、振り返る瞬間に、子どもたちは動きをピタッと止めます。
この「動きを止める」状態こそが、体幹筋の活動を引き出すポイントです。
姿勢を止める動作が体幹を鍛える
姿勢を保持するには、体幹の安定が不可欠です。何度も「動く→止まる」を繰り返す中で、自然と体幹筋の力が養われていきます。
腹横筋や腹斜筋といった深層の腹筋も無意識に使われるため、非常に実用的な筋力が育まれます。
バランス能力が向上する
鬼が振り返る瞬間に、子どもたちはその時の体勢のまま静止しなければなりません。
この姿勢が時に不安定であっても、体を崩さず維持することでバランス能力が鍛えられます。
不安定な姿勢を保つことがトレーニングに
走る途中、片足で踏みとどまる、前傾姿勢のまま止まるなど、日常ではあまり体験できない動作を繰り返すことで、バランス感覚のレベルが一段階アップします。
筋肉をタイミングよく働かせる能力が上達する
この遊びでは「動く→止まる→また動く」という一連の動作をタイミングよく繰り返す必要があります。
その中で、筋肉を瞬時に働かせたり、スッと脱力したりする能力が育ちます。
反応力と筋の切り替え能力が向上する
この“瞬間的な切り替え”こそが、転倒予防やスポーツ動作、日常動作に欠かせないスキルです。
まさに遊びの中で、運動神経を育てる格好のトレーニングになっています。
聴覚・視覚・固有覚を同時に育てる感覚統合の遊び
「だるまさんがころんだ」は、実は感覚統合の要素がとても詰まった遊びでもあります。
聴覚の発達:耳で合図を聞き分ける
鬼の「だるまさんがころんだ」の声が合図です。声のリズムや長さを聞き分け、次にいつ動き出せるかを判断する必要があります。
これは聴覚による注意力や予測力を高めるトレーニングになります。
視覚の発達:鬼の動きや表情を素早く読み取る
鬼が振り返った瞬間の表情や目線、体の向きを見ることで、動いても大丈夫かどうかを判断します。
この視覚的情報の読み取りと判断は、危険回避能力や空間認知力の向上にもつながります。
固有覚の発達:体の位置や動きを正確に感じる
走っている途中に急に止まり、体を静止させるには、「今、どこに力を入れたら体が安定するか?」を感じ取る必要があります。
これは関節や筋肉からの感覚(固有覚)を正しく受け取り、脳が適切に処理して体をコントロールする力につながります。
日常生活に役立つ実践的な筋活動が身につく
子どもの体づくりでは、特定の筋肉だけを使うより、複数の筋肉を協調して使うことのほうが、より実生活に直結します。
腹筋運動では得られない、複合的な筋活動
たとえば、寝た状態から起き上がる腹筋運動は、主に腹直筋しか使いません。
しかし「だるまさんがころんだ」では、動きを止める際に腹直筋、腹斜筋、腹横筋と複数の筋肉が自然と使われます。
この複雑な筋肉の協調こそが、「実際に姿勢を保つ力」につながります。
遊びながら姿勢をよくする基盤ができる
腹横筋は特に姿勢を安定させるのに重要な筋肉です。この筋肉が自然に働くことで、良い姿勢の保持がしやすくなります。
つまり、楽しく遊んでいるだけで、良い姿勢の基礎が作られていくというわけです。
まとめ:「だるまさんがころんだ」は体と感覚を育てる理想的な遊び
- 体幹筋を育て、安定した姿勢を身につけられる
- バランス能力と転倒予防力が高まる
- 筋肉をタイミングよく使う能力が鍛えられる
- 聴覚・視覚・固有覚を同時に育て、感覚統合が促される
- 実生活で役立つ筋活動が遊びの中で自然と習得できる
昔ながらの遊びの中には、子どもの発達に必要な要素がたくさん詰まっています。
「だるまさんがころんだ」は、まさにその代表格。遊びの時間が、将来の“生きる力”につながる大切な経験となります。

