足底刺激と足指活動の重要性

このページのまとめ
  • 足の裏には「メカノレセプター」と呼ばれる感覚受容器(センサー)が多くある。
  • メカノレセプターがしっかり働くことで、立位バランス能力が向上する。
  • メカノレセプターは「裸足で過ごす」、「足の指をよく使う」ことで比較的簡単に活性化する。
  • 同時に小脳にも刺激を入れることで、より体のバランスは向上する。

足底への刺激と体のバランスの関係

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体のバランスは、足の裏で取っている?!

二本足の人間がグラグラせずにまっすぐに立っているためには、体のバランス能力が要求されるのはご存知の通りです。

では、体のバランスってどこでとっているのでしょう?

体幹?頭?体全体?

 

いえいえ、実は立位バランスの基本となるのが、足底(そくてい)と呼ばれるところ、つまり足の裏です。

 

足の裏にはメカノレセプターと呼ばれる部分があります

これは感覚受容器と呼ばれるもので、足の裏だけでなく、体の色々な場所(関節など)にあります。

足の裏では、親指(第一指)、足の指の付け根の辺り(盛り上がっているところ)、踵などに多く存在します。

感覚受容器の役割とは?

それは感覚を受容すること、つまり「センサー機能」です。

 

バランスをとって立っている時、体には次のような反応があります。

足の裏にたくさんあるメカノレセプターという名のセンサーが、「どの位置に体重がかかっているか」、「まっすぐ体重がかかっているのか」、「どちらかへ傾いているのか」などを感じ取ります。

その刺激は神経を通じて、脳へと伝達されます。

脳では目や三半規管などから入った情報とメカノレセプターから送られてきた情報などを複合的に解析します。

そして体がまっすぐになるように(あるいは転倒しないように)体の各筋肉に司令を出し、バランスをとります。

 

このように足底のメカノレセプターは、立位バランスにおいて最初の情報を得るところです。

ですからこのメカノレセプターが発達していないと、体がどういう状態になっているか脳に伝達されにくくなり、脳も適切な司令が出せないということになります。

 

メカノレセプターは、使わなければその機能はどんどん低下します

例えば骨折して長い間足ギプスを巻いていた人は、メカノレセプターの機能が低下してしまっているために、ギプスが外れてすぐの頃は歩くとバランスを崩すということがよくあります。

また高齢者などでは、メカノレセプターの機能が低下し、そのため立位バランスをとることが難しくなった結果転びやすくなり、転倒事故につながるということがよくあります。

 

ちなみに転倒は寝たきりの大きな要因となっており、介護上の問題を引き起こすことが多々あります。

そういう意味では、高齢者においてもメカノレセプターを活性化し、転倒を防ぐことが大事です。

子どもにも広がっている、転倒リスク

そしてこの転倒は、高齢者だけの問題ではなく子どもたちの間でも広がってきているようです。

何もないところで転ぶ」、「一度つまずくと、そこから体を体勢を立て直すことができず、そのまま倒れてしまう」、さらには、「転倒しても手が出ずに、顔や歯を強打して怪我をする」などの現象もよく耳にします。

 

今や転倒事故は、高齢者だけの問題ではなくなりました。

私は子どもの転倒に関しても、メカノレセプターの機能低下が大きく関係していると考えています。

子どもたちは発達過程で十分な足底機能を活性化させることができず、その結果バランスを崩しやすい体になってしまったといえます。

その最たる要因は遊びの変化であると思われます。それについては別ページでお話したいと思います。

 

子どもの転倒事故にまでつながるメカノレセプターの機能低下。

しかし安心してください。

このメカノレセプターの機能は、意識して使うようにすれば、比較的早く活性化させることができます

ではその方法についてお話しましょう。

メカノレセプターはどうすれば活性化するのか

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メカノレセプターを活性化する簡単な方法があります。

それは足の指を使うことです。

または足底への刺激をしっかりと入れることです。

これだけでメカノレセプターは活性化します。

意識して使うようにすれば、比較的早期に改善が期待できるのです。

 

では足の指を使うこと、と言って思いつくことはなんでしょう。

一番簡単なのは、裸足で過ごすことです。

 

もともと日本の文化としては、裸足もしくは足袋を履き、履物は草履や下駄などを主としていました。

それが「西洋文化の輸入」によって、裸足ではなく靴下を履き、草履ではなく靴を履くという生活になってきました。

それでも昭和の頃の子どもたちは裸足で駆けまわることも多かったと思いますが、平成の時代には、外で裸足で遊んでいるという子どもはほとんど見かけなくなりました。

もちろん遊び場が土からアスファルトへ変わってしまったことも要因の一つでしょうし、また保護者の方が「裸足だと破傷風になっても困るし、砂場には犬のフンがあったりして不衛生だから」という理由であまり裸足にさせないように注意しているということも大きな要因でしょう。

 

それでも子どものバランス能力の発達にとって裸足で過ごすことは、とても効果的です。

せめて家の中だけでも裸足で過ごすようにさせたいものです。

メカノレセプターと小脳の関係

「姿勢に関係する小脳の発達」のページの中で「子どもの経験学習にとって、小脳はとても大きな役割を果たしているようだ」、ということをご紹介しました。

以前から立位バランス能力には小脳の機能が関与するということは周知の事実であり、小脳機能のほとんどがその役割を担っていると考えられていました。

バランス反応が発達するということは、小脳が発達することでもあるのです。

 

それに加えて、近年小脳には大脳が学習したことをコピーし、小脳の引き出しに記憶しておくという役割があると考えられるようになりました。

つまりメカノレセプターからの刺激を受けて、大脳がバランスの良い姿勢を学習する、それを小脳でコピーしているといえるのです。
ですから、立位バランスを良くするためには、メカノレセプターへ刺激を入れることだけでなく、小脳にもしっかりと刺激が入るようにすることが大事ということになります。

そして小脳に刺激を入れ、小脳を活性化させるには、「どんどん失敗をすること」が大事なポイントとなります。

 

子どもは失敗してこそ発達していくのです。

それを忘れずにいたいですね。