発達障害のある子どもさんの姿勢が崩れる理由

低緊張が姿勢の崩れの原因になっていることも

発達障害がある子どもさんの中には、姿勢が崩れやすい特徴をもった人がおられます。

それは筋肉の張りが弱い(低緊張といいます)状態のため、姿勢保持に大切な体幹筋が十分に働かないことが原因となり起こります。

筋肉の張りが弱いとは、「筋力が弱い」ということとは別物です。

筋力とはパワーつまり収縮力ですが、張りは、紐や布がピンと張った時のように筋肉がある程度の収縮を保った状態にあることを指します。

 

ヘンな例えですが、筋肉の張りとはパンツのゴムと同じです。

パンツのゴムがきつすぎると、お腹に食い込んで痛いですし、緩すぎるとずり落ちてしまいます。

これと同じで筋肉の張りは、張り過ぎず、緩すぎず一定の張り具合で維持されている必要があります。この張りがあることで、安定した姿勢を保持することができるというわけです。

 

低緊張ではないお子さんの場合、姿勢の崩れは張りの問題ではなく、筋力が弱い、持久力が弱いなどが原因となることが多いです。

そのため、外遊びや運動で一定の筋力や持久力がつけば(そして良い姿勢の習慣がつけば)、自然に姿勢は良くなっていきます。

 

しかし低緊張の子どもさんの場合、張り具合を適切にコントロールすることが難しいことが多く、安定した姿勢を取りつづけることが難しいというような状況が起こります。

また、遊びに対して興味が向きにくいなどの特徴があれば、姿勢を保持する機会も少なくなり、筋肉を適切な張り状態で維持する練習も行いにくくなってしまいます。

ボディイメージも姿勢保持には大切な要素

さて姿勢を保持するためには、筋肉の張りだけではなく、ボディイメージも大切になります。

 

ボディイメージとは、「今自分の体がどのような位置にあり、どこの部分を働かせばうまく体を使えるのか、目で見なくても分かること」と言えます。

ボディイメージが悪いとうまく体を保持する(または使う)ことができません。体を保持することが難しければ手先を使うことにも影響を及ぼすため、不器用さにもつながってしまいます。

 

体の各器官が感じ取った情報(視覚や固有覚と呼ばれる関節の位置を知る感覚)などは一旦脳で統合されます。

その後脳は「どのように体を使えばいいか」を考え、最も良い方法(使い方)を体の各器官に司令します。

この一連の流れが上手くいくことで、ボディイメージの向上や器用な使い方の習得が行えるようになります。

 

発達障害の子どもさんの場合、この感覚を脳で統合し、最適な司令を出すといったことが難しいことが多く、これが姿勢の悪さにつながってしまっていることも考えられます。

感覚統合が難しい場合、筋トレは効果的でない

このように脳での統合がうまく行かず、その結果姿勢の悪さが起こっている場合、筋トレをすれば効果的でしょうか。

答えはNOです。

 

それよりも体に入る色々な感覚を脳の中でうまく統合させる「感覚統合」といった練習が必要になってきます。

この練習方法は「感覚統合療法」と呼ばれ、主に作業療法士の方の専門分野です。

 

もう一つ発達障害のある子どもさんに姿勢良くする機会を作る方法としては、姿勢を良く座ることができるクッションなどを利用することです。

自分で座ることばかりを練習させるのではなく、比較的楽に良い姿勢で座ることができる環境を作ってあげるのです。

骨盤が起き、背すじが伸びた状態で座ることのできるクッションなどを利用すれば、座る姿勢は安定しやすくなります。

 

いずれにしても、「背中をシャンと伸ばしなさい!」と言ってみたり、筋トレをさせるなどの方法は決して効果的ではありませんので注意してください。

オススメ本

にしむらたけし(30代の頃)

作業療法士の著者が、遊びながら感覚、運動面を発達させるやり方を解説しています。図解されていて、保護者の方にも読みやすい構成です。