発達障害の低緊張タイプのお子さんは、子どものうちから将来の痛みを予防しよう!

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発達障害のある子どもの筋肉の問題は2つ。過緊張と低緊張

発達障害のあるお子さんは、筋肉の張りに問題があることが多くあります。

筋肉の張りとは、決して筋力のことではありません。ゴムひもを左右から引っ張った時のような緊張具合(張り具合)のことです。

 

張りの異常には、張りが通常より強い状態(過緊張)と張りが弱い状態(低緊張)があります。

過緊張のタイプのお子さんの場合、腕や足の筋肉を触ってみると、パーンと張った状態になっていることが多く、動きを見ていても、見るからに硬そうなイメージとして見ることができます。

一方で低緊張のタイプでは、筋肉を触ってみても、柔らかく、姿勢も崩れやすく、また動きも緩慢なことがあります。

 

あくまでも一般論ですが、臨床上、他動傾向のお子さんの場合は過緊張のタイプが多く、自閉症スペクトラムのお子さんの場合は低緊張であることが多いです。

【参考】
発達障害のある子どもさんの姿勢が崩れる理由

過緊張より低緊張に気をつけるべき理由

過緊張の場合あまり心配はないのですが、低緊張タイプのお子さんの場合、気をつけておくべきことが二つあります。

一つは、座っている時などの姿勢の崩れです。

低緊張のため、体をまっすぐ保持するのが難しく、体が崩れやすくなります。

 

また左右のアンバランスが生じ、体の色々な部分の不調を訴える原因になります。

例えば体の崩れからくる視力の低下、肩こり、頭痛などです

 

この姿勢の崩れに対しては、姿勢を正しく保持することができるための用具が効果的なこともあります。

 ※子どもの姿勢を考える会社「PAS」さんが開発した、座るだけで姿勢が良くなるクッション「p!nto(ピント)」。私の経営する療育教室にも置いています。

 

もう一つの気をつけておくべきことは、歩いたり走ったりする時に、足の筋肉がしっかりと働かないために起こる、膝や足首の変形や痛みです。

例えば、歩く時にしっかりと膝や足首で体重を支えられないため、膝が内側や外側に曲がったり(X脚やO脚)、足首が不安定なために、足部の骨の位置関係がズレてきたり(外反扁平足)します。

 

これらは、子どもの時期にはあまり痛みにはつながりませんが、成長とともに痛みを生じてくることが多く、大人になってから急に問題が表面化してくることが多くあります。

成人後に現れる痛みは、膝と腰に多く、ほとんどが慢性痛

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私の臨床経験では、思春期頃から膝の痛みや腰痛の訴えが多くなってくるケースが多いように思います。

ある就労継続支援施設で、20~30代の知的障害、発達障害の方の体の不調に対する相談事業(ご本人と施設職員さん向けに運動面からのアドバイスを行う)を行ったところ、多くの方が膝と腰の痛みを訴えられていました。

 

また、足首や膝の変形に由来する歩行姿勢の異常も同時にみられ、それがより膝の変形を助長し、さらにそれが痛みを生み出す、といった負のスパイラルに陥ってしまっていました。

 

成人期になってから出てきた痛みは、完全になくすことは難しく、痛みと上手く付き合っていくことが主流になります(もちろん医師の治療で治癒したり痛みのコントロールをすることが可能なケースも中にはあると思いますが、基本的には痛みを完全になくすことは難しく、また歩行姿勢などを改善させることも難しいのが現状です)。

【参考】

発達障害児によく見られる体の不調(1)腰痛

発達障害児によく見られる、体の不調(2)膝の痛み

成人期までに変形や痛みの予防をすることが大事

それでは、成人後に痛みや変形が出ることを予防するためには、どうすればいいのでしょうか。

それは、幼児期や学童期に、今行っている動作方法や歩く姿勢をきちんと評価し、将来の痛みの出現を予測した上で、適切な対処を行っていくことです。

 

では、対処方法とはどのようなことをいうのでしょうか。

それは、体の使い方を学習させる、弱い筋肉を(負担をかけずに)強くしていく、筋肉の柔軟性が低下しないように遊びの中にストレッチの要素を入れる、などの取り組みを行うことです。

 

子どもさんによって課題や問題が違いますので、個々にあったプログラムを指導してもらえるのがよいでしょう。

しかし残念なことに、発達障害のある子どもさんの体の問題や課題は、見過ごされることが多く、幼児のうちから適切な対処がとられることは皆無といってもよいのが現状です。

 

だからこそ、私たち大人がこういった問題を知り、学ぶことが大切です。

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