経験の積み重ねを待つことが大事
子供の健やかな発達のために大切なこと。
それは、「待つこと」です。
待つというのは、ぼーっと待つのではなく、子供が経験を積み重ねるのを待つ、ということです。
心配症の親御さんは、子供が自分でしようとする前に、ササッと手を出してしまいます。
そうすると、上手くできます。
しかし、それは形式上、うまくできているだけで、子供が経験から積み上げた「上手くできた」ではありません。
何の効果もありません。
例えば、服を着るという活動で考えてみましょう
服を着ることが自分でできるようになるまでには、袖の部分に頭を入れようとしてしまったりするなど、必ず失敗がつきものです。
例えば「袖に頭が入らない」ことを経験すれば、「この部分は頭を入れるところではないんだな」ということが分かってきます。
そして、隣にある比較的大きな穴が開いているところに頭を入れてみたところ、上手く頭が抜けました。
「ああそうか!頭はココを通すんだ!」と学習経験します。
経験学習=失敗経験と偶然の成功体験
子供の発達はこんなことの繰り返しです。
経験学習というのが子供にとって大切だ、ということは誰でも知っているでしょう。
では、経験学習とはどういうことを指すのでしょう?
それは「沢山の失敗経験」+「偶然の成功体験」です。
これは「歩き始める時」のことで考えると分かりやすいでしょう。
歩き始める→バタンと倒れる(失敗)→また立ち上がって歩き始める→また倒れる(失敗)→次に挑戦した時、倒れずに数歩歩けた!(偶然の成功体験)
こういったことを繰り返しながら、失敗の回数が減り、成功の回数が増えていきます。
そして最後は、成功のパターンだけが残ります(失敗しなくなります)。
成功はあくまでも偶然の産物
子供の発達において、あるいは経験において、成功するということは、偶然に起こります。
何も「上手くやってやろう」と狙って成功させているわけではないのです。
「あれ?上手くできた!?」という感じで成功し、そして徐々に成功体験が失敗よりも多くなっていくというようにして成長します。
だから、「成功の方法を体験させようとする」のはあまり意味がありません。
あくまでも子供が、自然に成功体験を積み重ねていくようにしてあげるのです。
ところで、最近の運動教育では、成功体験を持たせることばかりがクローズアップされます(保護者ウケがいいからかもしれませんが)。
しかし、成功体験ばかり経験させても意味がありません。
技術は上達するかもしれませんが、他に応用がききません。
「どれだけの失敗経験をさせてあげたか」が子供の発達には大切です。
「環境設定」と「待つこと」を忘れずに
環境設定とは、怪我をしないような空間作り、課題に取り組める環境作りなどを指します。
要は、「子供が伸び伸びと自由に失敗経験を重ねられるような環境を作る」ということです。
そして、「待つこと」が大切です。
決して大人が焦ってはいけません。
焦っているから、成功体験ばかりを経験させようとしてしまうのです。
いい意味で、放っておくのが良いでしょう。偶然に成功するのを待つのです。
大人ができることは、「安全な環境を作ってあげること」と「あれこれ口出しせず、いろいろ失敗を経験させること」です。
これこそが、子供が伸び伸びと育ち、失敗経験を積み重ねながら、上達していくために重要なポイントです。