【保育園・幼稚園・学校の先生向け】保育室・教室で気づきたい「姿勢と運動」のサイン

保育室や教室を見渡したとき、「どうしてこの子はこんなに姿勢が崩れやすいんだろう」「すぐ椅子をガタガタさせてしまう」「とにかくすぐ転ぶし、不器用だな」と感じる子はいないでしょうか。

つい「集中力がないのかな」「やる気の問題かな」と捉えがちですが、その背景には、発達性協調運動障害(DCD)などの「運動や姿勢のコントロールが苦手になりやすい発達の特徴」が隠れていることが少なくありません。

診断の有無にかかわらず、こうした特徴をもつ子どもは、保育室や教室に一定数います。


本記事では、発達性協調運動障害(DCD)など、運動や姿勢の協調が苦手になりやすい子どもたちの「姿勢」と「運動」に現れやすい身体のサインを、保育・教育現場で気づきやすい形で整理してみたいと思います。

「姿勢が悪い」は本当にやる気の問題か?

「ちゃんと座りなさい」「姿勢を正して」と何度伝えてもすぐに崩れてしまう。

こうした子どもたちの多くは、「注意力」や「やる気」が足りないのではなく、そもそも姿勢を支えるための体幹やバランス機能が未熟で、「まっすぐ座り続けることそのものが難しい」状態にあります。

さらに、発達性協調運動障害(DCD)などの特性が背景にある場合、座る・立つ・歩く・走るといった基本的な運動のなかに「目立たないけれど、日常生活に課題となる不器用さ」が見られることが知られています。

その結果として、「崩れた姿勢」や「落ち着きのなさ」として周囲の目に映りやすくなるのです。

座っているときに見られる身体のサイン

まずは、椅子座位の場面でよく見られるサインを挙げてみます。

  • まっすぐ座り続けられず、すぐにずり落ちてしまう、背もたれにだらっともたれかかる。
  • 背中が丸まり、猫背で頬杖をつく、机に突っ伏してしまうことが多い。
  • 椅子を前後に揺らす、片方のお尻だけに体重をかけて大きく傾く、足を投げ出したり、あぐらや正座に頻繁に姿勢を変える。
  • 書字や作業が続くと、姿勢がどんどん崩れ、顔とノートの距離が極端に近くなる。

こうした姿勢は「だらしなさ」ではなく、「体幹で自分の体を支え続けることが難しい」「体の位置を感じ取りづらく、安定する姿勢を探し続けている」といった、発達特性に伴うサインである場合があります。

立っているとき・動いているときに見られるサイン

座位だけでなく、立位や動作のなかにも、共通した特徴が現れます。

  • じっと立ち続けることが苦手で、体を左右に揺らしたり、片足立ちになったり、壁や棚に寄りかかることが多い。
  • 背中が丸い・腰が反りすぎている・頭が前に突き出しているなど、立ち姿にアンバランスさが目立つ。
  • 歩く・走るときにふらつきやすく、よく転ぶ、足さばきがぎこちない。
  • ボール遊び、なわとび、鉄棒、平均台などの運動遊びで、同年齢の子と比べて明らかに習得が遅れがち。

これらは、発達性協調運動障害(DCD)に見られる「粗大運動の不器用さ」とも関係します。

本人は「頑張っているつもり」でも、体をコントロールするための脳や神経の準備が追いつかず、結果として「不器用」「運動が苦手」という印象になってしまうのです。

手先の動き・日常動作に現れるサイン

姿勢や粗大運動だけでなく、日常生活での手先の動きにもサインが現れます。

  • ボタン留め、ファスナー、靴紐などの身支度に時間がかかり、「年齢の割に極端に苦戦している」ように見える。
  • はさみ、のり、箸、鉛筆などの道具操作がぎこちなく、細かい作業を避けがち。
  • 書字が極端に遅い、字が大きく崩れやすい、すぐ手や腕が疲れてしまう。

これらも、発達性協調運動障害(DCD)に特徴的な「微細運動の不器用さ」として知られており、「姿勢」だけを見ていては見落としがちな部分です。

「姿勢が悪い子」を見つけたら、その子の身支度の仕方や作業の様子も合わせて観察してみることで、より全体的にお子さんの課題を捉えることができると思います。

なぜこうしたサインが出るのか? 姿勢は「チームプレー」

姿勢を保つことは、単に「筋力」があればいいというようなものではありません。

以下のような要素がチームプレーのように協力し合って、はじめて楽に姿勢を保つことができます。

  • 体幹機能(持久力)
    胴体まわりの持久力が弱いと、座る・立つだけでエネルギーを大量に消耗し、すぐに崩れた姿勢になってしまいます。
  • バランス(前庭感覚)
    体の傾きや揺れを感じるセンサーが未熟だと、じっとしているほうがむしろ不安定で、揺れたり体勢を変えたりしながら「自分なりに安定する体の位置」を探そうとします。
  • 固有受容感覚
    関節や筋肉からの情報を感じ取りにくいと、自分の体の位置や力加減が分かりづらく、姿勢調整がうまくいきません。
  • 注意・実行機能
    注意が散りやすい子は、姿勢に注意を向け続けることが難しく、「気づいたら崩れている」状態になりやすくなります。

発達性協調運動障害(DCD)など、運動や姿勢の協調が苦手になりやすい子どもたちは、このチームで姿勢をコントロールすることに苦手さを抱えていることが多く、その結果として上記のような共通した姿勢・運動のサインが現れやすくなります。

先生・保護者が今日からできる見守りのポイント

最後に、「姿勢を正しなさい」と注意を重ねる前に、現場でできる工夫をいくつか挙げます。

①環境を整える

子どもの姿勢は、大人の想像以上に「椅子・机・足場」の影響を受けます。

大人でも、高さの合わない椅子に長時間座ると腰や首がつらくなるように、子どもも合わない環境では良い姿勢を保ち続けることが難しくなります。

  • 足底がしっかり床につく椅子と机の高さに調整する
    ぶらぶら足が浮いている状態では、体幹だけで上半身を支えなければならず、すぐに姿勢が崩れてしまいます。
  • クッションやタオルで骨盤や背中を支え、「良い姿勢」を本人任せにしない
    背もたれとのすき間にタオルを丸めて入れたり、座面の奥行きが深すぎる場合には浅く座れるようにクッションで調整したりすると、それだけで座りやすさが変わります。
  • 椅子の前後左右のぐらつきを最小限にする
    ガタガタ揺れる椅子は、ただでさえバランスが取りにくい子どもにとって、姿勢を保つ難しさをさらに増やしてしまいます。

「この環境で私(大人)なら何分座れるだろう?」と一度自分で座ってみる視点を持つと、椅子や机を正しく合わせることの必要性に気づきやすくなります。

②「長時間キープ」を求めすぎない

発達特性のある子どもにとって、「良い姿勢を保つこと」は、それ自体が集中力を使う作業です。

長時間キープを求めると、姿勢にエネルギーを取られすぎて、肝心の学習や遊びに力を注げなくなることもあります。

  • 3〜5分を目安に、小さな姿勢変化や立ち歩きの時間をあらかじめ組み込む
    たとえば「プリントを前から後ろに配る係」「黒板を消す係」など、短い「体を動かす役割」を設定しておくと、自然な形でリセットができます。
  • 「動く=悪いこと」と一括りにしない
    体幹やバランスが未熟な子は、じっとするよりも「少し動く」ことでかえって落ち着きを取り戻す場合があります。「この子は動きながら気持ちを整えるタイプかもしれない」という仮説を持って観察してみてください。
  • 一度で長く頑張らせるより、「短く良い姿勢が保てた経験」を何度も積み重ねる
    「今の5分、すごく座りやすそうだったね」など、できた瞬間を具体的に言葉にして伝えることが、自信づけにつながります。

③「不器用さ=怠け」と決めつけない

同じ年齢で同じように指導していても、「どうしてもできるようになるまで時間がかかる子」がいます。

その差を、努力ややる気だけで解決しようとすると、大人も子どもも疲れてしまいます。

  • この子もしんどい想いをしているのかもしれない、という視点を持つ
    できないことを責めるのではなく、「どう支えたらこの子はやりやすくなるか」という視点に切り替えることで、関わり方の選択肢が広がります。
  • 本人の努力だけで乗り越えさせようとしない
    何度注意しても変わらない「できなさ」には、背景に理由があることがほとんどです。「頑張れ」ではなく、「一緒にやり方を考えよう」と寄り添う声かけに変えていきましょう。
  • 必要に応じて、理学療法士・作業療法士などの専門職に相談する
    姿勢や運動に詳しい専門家に相談することで、「その子に合った椅子の高さ」「今の発達段階に合った運動遊び」など、より具体的な手立てが見えてきます。早めの相談は、子どもにとっても大きな負担軽減につながります。

おわりに |見えない困りごとを見つけてあげよう

発達性協調運動障害(DCD)など、発達の特性をもつ子どもたちの「姿勢」や「運動の不器用さ」は、決して本人の努力不足や性格の問題ではありません。

むしろ、「身体の使い方」「感覚」「注意のあり方」といった、その子の特性が最も分かりやすく現れているサインでもあります。

保育室や教室で出会う「姿勢が崩れやすい子」「とても不器用な子」に対しては、「この子の体には、どんな特性が隠れているのかな?」と一度立ち止まって考えていただくと、見えない困りごとが見えてくるはずです。

ぜひ、声にならない声を聞いてあげてください。

特性のあるお子さんへの姿勢や手立てについての研修も行っています

子どもと姿勢研究所では、一般のお子さんの姿勢・運動発達だけでなく、発達障害やいわゆるグレーゾーンのお子さんの姿勢や体の課題についての研修も行っています。
今回ご紹介したような「姿勢・運動のサイン」もふまえながら、園や学校でできる簡単な取り組みを、保育者・教師の方にわかりやすくお伝えしています。


園内研修や勉強会で「姿勢と発達特性」をテーマに学びたい園・学校・団体の方は、お気軽にお問い合わせください。

講義についてのお問い合わせ