自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに多い運動の苦手さとは?園や家庭でできるサポートのヒント

一般の園でも見られる、ちょっとした「ぎこちなさ」

最近は、保育園や幼稚園などの一般の園でも、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向があるお子さんに出会う機会が増えてきました。
コミュニケーションやこだわりといった特徴が注目されがちですが、実は運動面でも独特な苦手さを持っていることが多くあります。

「よく転ぶ」「運動あそびが苦手」「手先が不器用」など、園でもよく見かけるこうした姿は、ASDの子どもに見られやすい運動の特性かもしれません。

ASDの子どもに見られやすい運動の特徴

ASDの子どもたちは、体の使い方やタイミングの調整などで特有の難しさを示すことがあります。以下の表に、よく見られる特徴とその具体例をまとめました。

原因保育場面でよく見られる特徴
協調運動の難しさボールを投げても的に当たらない/キャッチができない/ダンスがずれる
バランス保持が不安定片足立ちができない/平均台やジャンプを怖がる
手先の不器用さボタン・ファスナーに苦労/ハサミがうまく使えない/字が崩れる
姿勢や歩き方の特徴背中が反っている/手を振らずに歩く/動きがぎこちない

こうした運動の苦手さは、「努力が足りない」「練習していない」と見られがちですが、実際には脳の発達や感覚処理の特性によるものです。

なぜ運動が苦手になるの?

ASDの子どもは、「脳と体の連携」に独特な特徴があります。

感覚の過敏さや、体の位置を感じる力(固有感覚)のアンバランスによって、運動のタイミングや調整が難しくなります。

また、見本を見ても動きがイメージしづらかったり、「どう始めればいいかわからない」という「動き出しが難しい」と感じていることもあります。

研究でも明らかになっている運動課題

ASDの子どもたちは、MABC-2(運動能力検査)などの評価ツールを用いた研究で、以下のような傾向が報告されています。

  • 協調運動、バランス、手先の器用さなどの分野で、定型発達の子どもより明らかに低い得点を示す
  • 姿勢制御や歩き方に独特のクセがある(姿勢が反る、歩きが硬いなど)
  • 一部では「失行(しっこう)」と呼ばれる、動作の順序がわかりにくい傾向もみられる

こうした運動課題は、学校生活や集団活動、自己肯定感にも影響を与えるため、できるだけ早い段階での理解と対応が望まれます。

家庭や園でできる小さな工夫

ASDの子どもたちにとって、運動を楽しむために必要なのは、「上手になること」よりも、「安心して取り組める環境」です

ここでは、家庭や園で取り入れやすい工夫を紹介します。

日常でできる対応

  • 集団説明だけでなく、1対1でゆっくり伝える
  • 動きを一緒にやってみせる(モデリング)
  • 刺激の少ない静かな環境で取り組ませる
  • 得意そうな動きから始め、できたらすぐに褒める
  • 活動前に「これから何をするか」を短く伝える

取り入れやすい運動あそびの例

課題タイプ活動の例
手先の不器用さビーズ遊び、ブロック、折り紙、お箸練習
協調運動の苦手さお手玉、風船バレー、ボール転がし
バランスの不安定さケンケン、片足立ち、バランスボード

「楽しくできた!」という経験が、自信や挑戦しようという意欲につながります。

おわりに

ASDのお子さんが示す運動の苦手さは、見た目には分かりにくいことも多く、つい「やる気がない」「不器用なだけ」と思われがちです。

けれど、子ども自身は「うまくできないこと」に戸惑い、不安や自信のなさを抱えていることもあります。


大人がその背景を理解し、寄り添いながらサポートすることで、子どもは安心して動き、少しずつ自分のペースで成長していきます。

園と家庭が連携して一緒に見守ることで、お子さんの可能性はぐんと広がります。